あなたとホワイトウェディングを夢みて

 威厳を振りまく父親に負けじと、郁未もまたソファー深く座り、長い脚を高々と上げては組み直す。

「お前程のプレイボーイなら落とせない女はいないだろう?」
「だからとその手には乗りませんよ」

 どこの誰を落としても最後には見合い相手と結婚させるつもりだろうと、俊夫の考えくらい読める。
 そんな危険な賭けに乗るつもりはなかった。
 それなのに、俊夫はとんでもない相手の名前を口にする。

「佐伯留美を落としてみろ」
「なっ?! 何を血迷った事を」

 賭けの対象にするにはあまりにも最悪な人物だ。
 しかも、父親なのに『色仕掛けで落とせ』と言う。
 信じられない言葉に絶句した郁未は、思わず天を仰ぎ見る。

「あの女をお前の恋人に出来たら、今回の縁談はなかった事にしてやってもいい」
「冗談じゃない! 天敵の様な相手を口説けるか」

 これでは自分に不利な賭けだと拒否する。
 しかし、俊夫は聞く耳を持たず、郁未の言葉を受け入れない。

「女を口説くのはお手の物だろう? 俺ならどんな相手でも口説き落としたぞ」

 若い頃の俊夫も郁未と同じく名を馳せたプレイボーイだった。年齢を重ねた今も、ロマンスグレーとしての色香を保つが、今は妻にのみ口説き文句を使う。
 しかし、その魅力は今も健在だと、不敵な笑みを向ける。

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