あなたとホワイトウェディングを夢みて

 行儀が悪いと思いながらも、好奇心には勝てず指で摘んで口へ放り込んだ。

「?!」

 味を確かめたくて、味見にしては多い量を口に入れたのが間違いだった。
 まるで炎を食べた様な感覚に口から火を吹きそうになる。口の中が火傷したみたいに熱くて痛くて目に涙を浮かべる。なのに、何を血迷ったのかゴックンと惣菜を飲み込んでしまった。
 当然のこと、留美の喉が奥の方からジリジリとした熱で焼け焦げそうな気分になる。

「ひ……ひゃず…………ひゃ」

 『水が欲しい』と言葉すら出てこない。
 急いで流し台へと駆けて行き、水道水を飲もうと蛇口に手を掛けたその時、

「ビービービー」

 誰かが玄関ベルを鳴らす。
 こんな一大事に誰が来たのか。それに普段は留美のアパートへ来客など殆どない。
 無視しようとしたがしつこく繰り返し鳴る玄関ベルに苛つき、玄関へ走った留美はドアを開けて『ひゃれよ』と叫ぶ。
 言葉にならない声の留美。目の前には何故か驚いた顔をした郁未が立っていた。

「や、やあ」

 いつもの真面目でお堅いスーツ姿とはかなりかけ離れた留美の格好。ショッキングピンクのシャツに、それと同色のジャージのズボン姿。
 その意外な姿に驚いた郁未だが、更に半ベソかいた留美の顔が面白くて、ついプッと吹き出して笑ってしまった。
 突然現れたかと思えば、人の顔見て笑う郁未に、カチンと頭に血が上った留美が玄関ドアを力任せに閉める。
< 67 / 300 >

この作品をシェア

pagetop