あなたとホワイトウェディングを夢みて
腰を抜かしかけた留美が、ドアに寄りかかったのを見てニヤリと郁未が微笑む。そして前屈みになると、留美の顔に近付き更に甘い声で囁く。
「そんなに俺の声に痺れたのか?」
昨日までは自分の事を『私』と話していた郁未が、今日は傲慢な顔付きで『俺』と言う。
それは、昨夜のあのキスと関係があるのか、思わず留美は郁未の顔を見た。
「ど、どうしてここにいるんですかっ?!」
いきなり背後から出てこられたのでは、留美は心の準備が出来ていない。あまりの驚きに心臓が破裂するかと思った。
留美がかなり動揺すると、郁未がいつもの高慢な態度に戻る。
「ここは俺の部屋だ。居てあたり前だろう。それより、ドアに寄りかかられては壊れるだろ」
いつもの冷たい言い草だが、その方が留美には聞き慣れた口調だ。
すると、郁未が留美の腕を掴み引っ張った。
次の瞬間、留美の体がフワッと宙に浮き上がり、とんでもない体勢にさせられる。
ビックリドッキリのお姫様抱っこだ。驚きのあまり留美の心臓は爆発寸前。
「随分と顔色が悪いな。医者へ行くか?」
「お、おろして下さい! そしたら顔色も良くなります!」
しかし、郁未は一向におろそうとしない。それどころか、丁度居合わせた見習いの秘書に『山本にコーヒーを二つ持ってくるように伝えろ』と横暴なセリフを言う。
真新しいリクルートスーツを着た、初々しい秘書は社内で有り得ない光景を見たと驚きで固まってしまった。