あなたとホワイトウェディングを夢みて

 留美にコーヒーを渡した山本はさっさと秘書室へと戻って行く。留美は仕方なくまた専務室へと入って行く。

「何だ?」
「コーヒーです」

 秘書にコーヒーを頼んでいたのを思い出した郁未。

「そうだった。君も一緒にコーヒーを飲もう」

 そう言うと、留美を逃さない様にと郁未の動作は素早かった。
 瞬時に留美の背後に回り、背中を押してはソファの前まで連れて行く。留美からトレーを取り上げると、ソファ前のテーブルに置いた。郁未が留美の肩を掴み、力を込めて押し下げては強引にソファに座らせる。
 そこまでの一連の動作は、留美に有無を言わせないものだが、香ばしい香りのコーヒーを『どうぞ』と差し出す郁未の表情はとても柔らかだ。

「はぁ、どうも……」

 いつもの傲慢な郁未だが、今日はそれ以上に強引で何故か優しい。調子が狂う留美は、コーヒーを早く飲んで持ち場へ戻りたいと考える。
 郁未の身に何があったのか留美には分からないが、今の郁未に振り回されては心臓が幾つあっても足りない。
 ハラハラドキドキさせられたり、ムッと怒ったり、かと言えば、今みたいに優しい笑顔を向けられると、流石はイケメン女ったらし、胸キュンしてしまう。
 お姫様抱っこされた時は心臓が破裂するかと思った。
 しかし、留美は平素を装う。すると、留美の気を惹こうと、郁未が留美の隣へと腰を下ろし肩に腕を回す。
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