あなたとホワイトウェディングを夢みて

「言っただろう? リラックスしている時の君は可愛いと。今の君もそうだ」

 今の留美は真っ黒なスーツを纏い、とても色気は無いし可愛い格好でもない。葬式ならば問題なく参列できそうな質素で慎ましやかな出で立ちだ。
 それでも、そんなセリフを言わなければならないほど、郁未は女性に愛想を尽かされたのかと、留美は憐れむ眼差しで郁未の顔を見つめる。

「……君、今なにを考えている?」

 たとえキスした間柄とは言え、あれは事故で郁未とは上司と部下だ。正直に話すのは気が引けるし、今は仕事に集中した方が良さそうな気がする。
 留美は身体を少し郁未の方へ向け、両手を膝の上に揃えると改まった態度で、話題を変えて質問する。

「データを見て頂きたいのですが」

 郁未が首を横に振ると、留美の唇に人差し指を重ね『違うだろ』と囁く。そしてその囁きは耳許へと近づきだんだん留美の頬へと寄って来る。

「あの……専務?」
「今夜、得意先とディナーの約束がある。君も一緒に連れて行く」

 この夜は得意先との会食を予定していた。今回は一人で行く予定だったが、折角の高級ホテルでのディナーだ。ドレスアップした留美の胸元を豪華な宝石で飾り、どんな姿に変身するのか確かめたいと、郁未は目を輝かせる。
 そしてその後は言うまでもなく、予約したホテルのスウィートルームで甘い時間を過ごすつもりだ。
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