あなたとホワイトウェディングを夢みて
本来なら一緒にディナーへ出かける女性が美しく着飾ったその姿を、エスコートする男性が言葉巧みに褒めるのは当然の事。なのに、郁未は言葉が一つも頭に浮かんでこなかった。
頑固一徹、お局様の様な五月蠅い女と思っていた留美が、これまで付き合ってきたどの女よりも淑女で清楚で愛らしく、それは有り得ないと頭を痛める。
留美を置いて店先の駐車場に停めていた車へ一人で戻ってきた郁未だが、後ろから『待ってよ』といつもの口調で慌てて追い掛けてくる留美に気付き足を止めた。
「置いて行かなくてもいいでしょう。こんな調子でお得意様と一緒にディナーなんて出来るのかしら」
ブツブツ文句を言う留美の声が、いつも通りの声だった事にホッとした郁未は、大きく深呼吸すると振り返り『さっさと来い』と、いつもの調子で留美に車へ乗る様に言う。
相変わらず傲慢な態度だと不平不満だらけの留美だが、目の前の車が昨日見た高級車と少し形が違う事に何度も瞬きする。
「リムジンじゃないの?」
ドレスアップしたのだから、運転手付きのリムジンでホテルへ行くものだと、昨日の女性を自分に置き換えて想像していた。なのに、今日は郁未が運転手のスポーツカータイプの車がそこにある。
郁未が助手席のドアを開ける姿を見ると、これも悪くないのだと留美は自然と笑みが浮かび『ありがとう』とお礼を言って助手席へと乗り込んで行く。