狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
三上さんが私との距離をさりげなく詰めた時だった。 

「赤野」

いつの間にそこにいたのか。

音もなく現れた大神カチョーが間にニュッと割り込んで、私達を一歩ずつ左右へ分けた。

彼は先週、出張から帰ってきたばかりだ。
 
「年末の挨拶回りに行く。車取ってこい」

三上さんがすぐさま抗議の声を上げる。

「え~~、また赤野さん⁉
挨拶回りなら俺が……」

「い、行きますっ私!」

言うや否や、私はダッシュで駆け出した。

背後ではまだ、2人が言い合いを続けている。

「カチョー、赤野さんはちょっと疲れぎみなんだから……」

「いいんだ。
それよりお前は、先週の報告書を早く上げてこい」

「うへぇ~……」

三上さんがカッと舌を打ったのを最後に、2人の声は聞こえなくなった。


……助かった。どうやって断ろうかと考えてたとこだったんだ。

だってこんなバカげた話、恥ずかしくって誰にも話せないもんね。
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