君色キャンバス
 
 昔はどんなに親に止められても、クレヨンで思い切り絵を描いた。
 ふと目に留まる風景を12色しかないクレヨンで。

 そして「上手ね」とか言われる度に自慢げに胸を張っていた。

 誰かが俺の絵に感動しくれる度に嬉しくて、それだけで1日が充実していた。


 いつからだろう。
 こんな風になってしまったのは。


「中野……。俺が絵を描くという行為を許せるか?」

 誰かに俺の絵の全て見せれる人が出来たら、俺は訊きたかった。

 中野は涙を拭いながら

「当たり前だよ……」

 そう言った。


 その言葉だけで全てが変わっていく気がした。


「ありがとう」


 もう十分だ。
< 37 / 210 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop