君色キャンバス

 俺はゆっくりと目を閉じた。

 相変わらず心の深くにある重い鎖は外れそうもない。

 父の言葉は今もなお、締め付ける。

 
 あの日を許せる事は一生出来ない。

 あの日背負わされたものも消える訳じゃない。


 でもそれ以上に俺は絵が好きだ。

 描いてる瞬間がたまらなく、俺の時間を生かしてくれる。


「……一之瀬君?」

 その言葉に閉じた目を開いた。


「お前に逢えてよかった」

「……え?」

「お前が居なければきっと俺は絵を憎み、過去を恨んでいた。
 だけどそれは違うものなんだと気づいたから」

 俺は心から微笑む。
 
 
 絵が描きたい。

 本気で今の気持ちを。


 褪せた世界に視点を変える。

 それだけで変わる色を俺の絵で表現したい。


 大切な心の絵を、届けたい。

 
 そう思った時、感じる想いは一つ。


「俺は今から絵を描く。今の気持ちを描き表すから」

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