柚時雨



 「奏ちゃん、古文の宿題やった?」

 「んあ?そんなのあんの?」

 「先生言ってたよ。今日までって」


 おっとりしているようで

 意外としっかりしている里奈は

 俺と同じ高校、クラスとだけあってか

 いつも宿題だの行事だの

 朝に会う度、教えてくれる。

 それが里奈の、日課でもあるのだろう。

 まあ、俺はそれに救われている。



 「奏ちゃん、頭いいのに。
  授業全然聞いてないでしょ?」

 「聞いてるよ、里奈から」

 「リアルタイムで聞くよ、フツー」

 「俺は眠たい病だから」


 呆れたような表情で

 里奈は俺を見上げた。



 「もうノート貸さない」


 ふん、と言って足を速め

 里奈は俺を越して行った。


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