カワイイ子猫のつくり方
「その検査っていつ頃やんの?母さん、ずっとココにいるつもり?」

「…そうねぇ、意識さえ戻れば少しは安心出来るんだけどね…」

「うーん…」

二人して実琴を眺めながら遠い目になる。

暫く無言でいた二人だったが、不意に武瑠が切り替えるように言った。

「とりあえず、何か飲み物でも買ってくるよ。母さん、何が良い?」

「あら、気が利くじゃない。ありがと。じゃあお茶をお願いしようかな」

すると、武瑠は快く「お茶ね、了解」と笑顔を浮かべながらも手を差し出した。

「それでは、先立つものを頂ければ幸いです♪」

ニコニコと悪びれる様子もなく、平然と金をせびる息子に母は今度は呆れた溜息を吐いた。

「まあね、あんたに奢って貰おうなんて思ってないわよ」

そう言って渋々バッグから財布を取り出す。

「その調子の良さには呆れるけどね」と、付け足す母親に当の本人は、そんな反応さえ楽しんでいる様子だった。


「では、行って参りまっす♪」





その頃、実琴は通りすがりのベビーカーの荷台を経由して人の少ない場所へと移動していた。

混雑している待合室から少し外れた場所のベンチ下で、そっと周囲を伺う。

(この病院…かなりの種類の診療科が入ってるみたいだなぁ。こんなに広いと人として来たって迷っちゃいそうだよね)

とりあえず案内板がここから見える位置にあるので、何とか目を凝らす。
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