カワイイ子猫のつくり方
だが、外傷もないのに意識不明のままだなんて、この状態を納得できる筈もなく。

今日、再び詳しい検査をして貰えるというので、それで何かしらの原因や解決策が見つかることを願うだけだった。


その時、スタスタと足音が近付き誰かがこの病室内へと入って来た。

もっとも病室は4人部屋なので、どの患者の元へ来た関係者かは分からないのだが。

診察か何かだろうか?と、母親が思っていた時。不意に実琴のベッドを囲んでいるカーテンがひらりと捲られた。


「オッス。お疲れ」


そこに現れたのは一人の少年だった。

「あら、武瑠(たける)。アンタも来たの?」

「まあね、今日は学校休みだし。一度くらいは様子見に来てやらないとなって思ってさ。何?姉ちゃん、まだ目ェ覚めてないの?」

その少年…武瑠は、横になっている実琴の顔を上から覗き込んで言った。

「ずっと眠ったまま。いったい、どうしちゃったんだろうね、この子…」

母親は再び深いため息を吐いた。

「ふうん…。頭の打ちどころでも悪かったのかな?」



武瑠は実琴の二つ年下の弟だ。

中学三年生の平均身長と比べるとかなり背が低く、まだ子どもっぽさが抜けきれていない、あどけない容姿をしていた。

姉弟だけあって、どことなく実琴とも雰囲気が似ている。

実琴と武瑠は、普段から顔を合わせれば何気ない会話も交わす、それなりに仲の良い姉弟であった。
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