カワイイ子猫のつくり方
病室へ入るのは特別難しいことではなかった。

何より院長の存在がやはり大きいのだろう。

「知り合いの子なんだ」と院長に扮する守護霊さんが説明すれば、看護師達は特に何も疑うことなく、どうぞと快く通してくれた。


「但し、患者さんの元には離床センサーのマットが設置されていますので、誤ってマットを踏むことのないようにご注意下さい」

そんな補足説明に守護霊さんは「ああ、分かった」と澄まして応えていたが、こっそりと後ろにいる朝霧に「…それってなぁに?」なんて小声で聞いてきた。

朝霧は面倒くさそうに小さく溜息をつきながらも、

「離床センサーというのは、患者がベッドを降りたことをナースセンターにいる看護師に知らせるものだ。徘徊する患者などによく使用されている」

そう小声できちんと説明を返していた。

守護霊さんと同じ疑問を持っていた身としては、成程…と関心するばかりだ。


病室は、ナースステーションのすぐ近く。斜め向かいの個室だった。

一般の相部屋は大抵入口に扉などがなく、ベッド周りをカーテンで個々に区切られているだけだが、個室は造りが違うらしく、きちんと扉が閉められていた。

「入るぞ」

朝霧が確認を取るように聞いて来たので、実琴はポケットの中で小さく頷いて返す。

そっと引き戸をカラカラと開けていくと、室内は真っ暗で明かりが灯っていなかった。

廊下の明かりで辛うじて窓際にベッドがあるのが分かる。
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