カワイイ子猫のつくり方
「おい…。大丈夫なのか?…辻原っ?」

先程までの光は消え、元通り薄暗くなった部屋の中、一歩ベッドへと近寄ると。

「……っ…」

辻原本体の方がうっすらと瞳を開いた。その腕に抱えられたままの子猫の方は意識を失ってしまっているのか、未だ目を瞑ったままだ。


いったい、どうなったんだ? 

意識のない子猫の方が未だに辻原本人なんだろうか。

それとも、元に戻れたのか?


見た目だけでは判断出来ない状況に、辻原本体の次の行動を待った。

すると…。

「あさ…ぎり…」

「!」

「やったわ。成功よっ」

辻原の口から無事に言葉が出てきて、入れ替わりが成功したことを確信する。

柄にもなく緊張していたのだろうか、知らず知らずのうちに力んで固まっていた肩の力をホッ…と抜いた。

辻原は横になったまま、気だるそうにこちらを見上げてくる。

「わた、し…」

「ミコちゃん、やったわねっ。猫ちゃんの方も無事元に戻ってるわよっ」

祖母が嬉しそうにはしゃぎながら辻原の顔を覗き込むようにして言った。

だが、そんな光景も何だか複雑で。
 

(あまりそう顔を近付けるなよっ)

その身体は親父のなんだってことを忘れないで欲しい。


内心面白く無さを感じながらも、俺の名を呼ぶ辻原の言葉に耳を傾けた。

「あのね…朝霧。ネコちゃんを…お願いしても、いいかな…?」

「ああ。ちゃんと連れて行くから心配するな」
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