カワイイ子猫のつくり方
不思議な力を使ったことで疲れているのか、辻原は意識をやっとで保っているような感じだった。

「あり、がと…」

弱弱しい笑顔を見せると、そのまま意識を手放してしまった。

一瞬慌てたが、祖母の話では眠っただけとのことだったので、俺達はその後そっと病室を後にしたのだった。



病棟になっている4階へと上がると、朝霧は昨日訪れた実琴の病室へと真っ直ぐ足を運んだ。

昨夜と違い、病室斜め前にあるナースステーションの看護師には軽く会釈するだけで難なく通ることが出来た。それは、実琴の回復が順調な証拠でもあるのだろう。

朝霧は病室の前へと立つと、一呼吸置いてからドアを軽くノックした。

「はい」
 
遠くで返事がする。声からして多分辻原の母親のものだろうと推測する。

朝霧は「失礼します」と、ゆっくり扉を開けた。




「あら…?どちら様?」

病室内には、実琴の母親と弟の武瑠がいた。

二人が見知らぬ来訪者に動きを止めて注目している中朝霧は、ある種の営業スマイルを見せながら口を開いた。

「こんにちは。僕は実琴さんの高校の同級生で朝霧といいます」

「あさぎり…くん?じゃあ、あなたが木から落ちた実琴を見つけてくれたっていう…」

どうやら、実琴が木から落ちた際の詳細情報として朝霧の名前は母親の耳に入っているらしかった。

軽く頭を下げ、きちんと挨拶をする朝霧に実琴の母は笑顔を見せた。
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