彫師と僕の叶わなかった恋
過去の秘密・・・・3

シンジはスタジオに帰って来るなりレイに直ぐ

「レイさん、失敗しました。あいつ刃向って来やがって」

「・・・・?」


「レイさん、もう止めませんかこんな事。最初は俺、何かオドオドしてムカつ
くオヤジだと思ってましたけど、段々と自分のやってる事の方が男らしくない
様な気がして、もう嫌なんです」

とシンジはレイに訴えかけた。

「分った、もういいよ。これ今回のバイト代な。ありがとな」

と言ってレイはシンジに最後のバイト代を渡した。

自分でも男らしく無い事をしている事は気が付いていた。

 レイはウィスキーのボトルに口を付けながら、独り言を呟いていた。

“俺はAkiさんが彫師になると決めてから道具の使い方から

彫の練習台まで誰よりも率先してやって来たつもりだ。

それなのにAkiさんは俺とは必ず一定の距離を保ってしかくれない。

それなのに“あいつ”は一人の客として来ただけなのに

今はもうAkiさんの心を掴もうとしている。

自分でも卑怯だと思っているが、俺はそんな“あいつ”が許せなかった。

でも、もう止めだ。

正々堂々と俺らしく勝負しよう。

こんな真似を何時までも続けていたら俺を慕ってくれている

シンジ達にも示しがつかない。俺は俺のやり方でAkiさんを振り向かせて

見せる“と決めた。

Akiはレイの独り言を聞いてしまった。

レイはAkiが帰ったとばかり思っていた様だが、奥でデザイン画を描く

事に没頭していてAki自身もレイが居る事には気が付いていなかった。

けれどレイとシンジの声が聞こえて、初めてレイが残っていた事を

知ったのだ。

レイが好意を持ってくれているのは、何となく気が付いていた。

それでも過去を忘れられずに一定の距離を保ってレイには

接するようにして来た。

そこにマサルが現れた。

最初こそただの一人のお客さんとして接していたが、マサルと話すたびに

過去を思い出す自分と、過去を忘れてる瞬間がある自分が居た。

だから忘れる事に決めたのに、まだ心のどこかに忘れらない

部分が残っている。

それが怖くなりAkiはマサルの事を避けていたのだ
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