彫師と僕の叶わなかった恋
一心で ・・・・4


「楽しみにしてますよ」とAkiさんは笑顔でそう言った。

その日はお会計を済ませ、真っすぐ家に帰った。

時間が無い。

前回のお店は一度行った事が有るから分ったけど、今回はどこにしよう。

前回のお店を超えるなどと安請け合いをしてしまったが、

最近の外食は頑張ってファミレス止まりだったので

前回を超えるには程遠っかた。

ネットで調べても、良さげなお店は予算オーバーで厳しい。

でも、この気まずさを何とかするには少々の予算オーバーは仕方が無い。

翌日、僕はレストランを予約した。

そしていつもの水曜日、Akiさんは

「今日はどんなお店ですか~」

と早速に聞いて来たので、僕は

「お寿司屋さんです」と答えると。

Akiさんは

「え~肉じゃないんですか~」

とちょっと不服そうな顔をしたので、僕は笑いながら「嘘です」と答えた。

するとAkiさんは「帰ります」

と言って帰り始めたので僕は慌てて

「ごめんなさい本当はレストランです」

と言ってAkiさんを引き留めた。

するとAkiさんは

「勝ち~、マサルさん本当に人がいいんですね。気を付けなきゃダメですよ
騙されちゃいますよ」と真剣な顔つきで僕にお説教をした。

レストランに着くと、Akiさんは

「ちょっと~こういう所に来るんだったら早めに言ってくださいよー。こん
な普段着で来ちゃったじゃないですかー恥ずかしいですよ」

とちょっと怒ったので、

僕は「僕も普段着だから平気ですよ」

と言って二人で少々場違いな恰好でお店に入った。

席に着くと、ワインをもったソムリエがやって来たが、飲めない2人は

水で乾杯した。

前菜が運ばれて来た。

Akiさんは待ち切れないのか

「お肉はまだ来ないんですか~」

と子供の様にせっつくが、順番を決めたのは僕ではないで

「もう少しですから我慢してお野菜食べてください」と子供扱いすると

「マサルさんこそ栄養足りてないから、お野菜食べてくださいよ。あ、なん
なら私の分も食べます?」

と言ってサラダの乗ったお皿をそのまま、僕の方に差し出した。

僕は「サラダを二人前も食べたら、僕がお肉食べられなくなっちゃいますよ」

と言って断った。

するとAkiさんは「作戦失敗か~」

と言って残念そうな顔をしたので僕は“ピン”と来て

「僕の分のお肉はあげないですよ」

と最初に釘を刺しておいた」

そろそろお肉が来る頃だなと思っているとAkiさんが

額に脂汗をかいてお腹を押さえている。

僕は“お腹すいた”とでも言うのかなと思って待っていると

耐えられなくなったのかテーブルに額を載せて指をギュッと

握ったまま動かなくなった。

僕は心配になり

「Akiさんどうしたんですか?大丈夫ですか?」

と聞いても返事が無い。

「もうすぐお肉来ますから変な演技は止めて下さいよ」

と言っても返事が無い。

変だ、様子がおかしいと思っていると、Akiさんが椅子からずり落ち

そのまま気を失ってしまった。

直ぐに救急車を呼んで、病院まで行き、救急センターに運ばれて行った。

僕は待合室でAkiさんが出て来るのを待っていた。
< 32 / 39 >

この作品をシェア

pagetop