彫師と僕の叶わなかった恋
二人は静かに ・・・・5

ポップコーンを食べながら、笑ったり、Akiさんに肩をぶたれたりして

歩いている時にAkiさんが

「最後に、あれ乗りたい」

と指差した先には、大きな船が左右に大きく揺れている

アトラクションが有った。

“あれはダメだ、今のAkiさんの体にはハード過ぎる”

と思い何とかなだめようとしたが、Akiさんは意外に頑固な所があり

結局は言い負かされてしまいそれに乗る事になった。

僕はこう言ったいわゆる“絶叫マシーン”があまり得意ではない

と言うよりも苦手だった。

その大きな船はゆっくりと左右に動きだしどんどんと高度を増していく。

僕はこのまま下に落ちるのではないかと思い安全バーに必死に

しがみついていると横でAkiさんがキャキャ言って楽しんでいる。

僕は男の体面を保ててる間に終わってくれと

思いながら揺れる絶叫マシーンと格闘していた。

絶叫マシーンが頂点に達した時、横から何かが振り撒かれた。

僕はその瞬間、Akiさんに何かあったと思い横を見たがAkiさんは何事も

無かったかの様に楽しんでいる。

あれが何だったのかは良く見えなかったがAkiさんが

無事ならそれで良かった。

ようやくアトラクションも終わり、僕はもつれそうになる足に気合を入れて

Akiさんと降りた。

暫くして、Akiさんが僕のポップコーンの容器をジーっと見つめている。

そしてAkiさんは

「ちょうだ~い」

と言って手を差し出すので、何を上げればいいのか分らなかった。

が、Akiさんは自分のポップコーンの容器をジッと見ていた。

僕は“あ”さっきの何かが降って行ったのはAkiさんの

ポップコーンだったのかとやっと気が付いた。

でも、Akiさんを少しいイジメたくなり

「嫌ですよ、これは僕のポップコーンですから」

と言うとAkiさんは

「ケチ」

と言って拗ねた。

その仕草が可愛かった。

僕は「じゃあ、半分個にしましょう」と言って容器を差し出した。

本当はそんなにポップコーンに興味は無かったので、全部あげてしまっても

良かったのだけど、Akiさんと半分個にする事が少し嬉しくて、そう言った。

見てるとAkiさんはどんどん自分の容器にポップコーンを入れて行った。

僕は「ちょっと待って、Akiさん、半分個って言ったでしょ」

と言うと

「ちゃんと半分個にしてますよ」

と開き直ったので、僕は

「Akiさんの方が絶対に多いですって」と言い返したら

「男の子でしょ」

とAkiさんは笑いながら言われてしまい

僕は「一応そうですけど」と言って二人で笑った。

ポップコーンでこれだけ笑いながら話せるなんて本当に不思議な人だ。

段々と日も落ち始めたので、僕は病気に差し障るから帰ろうと促したが

Akiさんは

「この後に始まるパレードが見たいから
それを見てからじゃないと帰らない!」

とまた駄々をこね始めた。

僕は「何時に始まるんですか?」と聞くと

Akiさんは「8時」と答えた。

時計を見ると後30分程だったので、また僕が折れる事になった。

僕たちはパレードの見やすい位置に席を取りパレードの始まるのを待った。

突然大きな音楽が流れたかと思うと向こうから

七色に輝く乗り物の列がやって来て僕達の前を通り過ぎて行く。

綺麗だなーと思って観ていると

Akiさんの手が僕の手の上に乗せられていた。

僕はパレードよりもそのAkiさんの手をずっと見ていた。

そう言えば、昼間も手をつないで回れたらもっと楽しかったのに

何にも気が付かずにただAkiさんにとって大切な一日を“遊園地回る”だけで

過ごさせてしまった“と思うと情けなくなった。

パレードも終わり、帰ろうとした時に僕は頭に付けたカチューシャと同じ

アヒルのネックレスを買いたくて、来る時に寄ったお土産ショップに

立ち寄ったってそれを買った。

Akiさんは「付けて」と言いそのネックレスを僕に渡した。

僕は震えながら、初めてみるAkiさんの首にそのネックレスをつけた。

そのネックレスを僕は意図的に買った。

“この日を忘れないで、そして僕の事も忘れないで”

と見る度に思い出してもらいたかったから。
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