例えば星をつかめるとして
星を見よう──そう言った叶多に誘われてやってきたのは、いつかのように空の上だった。今度は自転車も無いから、私は叶多の手をしっかりと握りしめて。
彼によると、叶多が触れているものも彼の一部として、重力を変化できるらしい。つまり、叶多に触れている限り、私も叶多と同じように浮くことが出来る、ということ。
「寒くない? 大丈夫?」
夜空をだんだんと上がっていきながら、叶多が訊ねてきた。高度が上がると当然だけど空気も冷たくなる。私はそれを見越して、厚手のパーカーを着込んでいた。大丈夫、と首を振る。
「良かった。もし寒くなったら言ってね。僕が体温を上げた状態で君を抱きしめれば、カイロみたいな感じで暖をとれるでしょ」
「……体温も調節出来たの?」
抱きしめる云々より前の部分につい食いつくと、彼はどこか得意げに大きく頷いた。体温もって、知らなかったんだけど。
「出来るよ、ほら」
そう言った途端、握っていた叶多の手のひらが すっと冷たくなる。え、と思った瞬間には、もう元に戻ったのだけど。
「えへへ、すごいでしょ? あ、どうせなら保冷剤の役割もすれば良かったかもね。エアコンなくても僕がさっきみたいにすれば涼しかったね」
「う、うーん……死んでるみたいで不気味だからやめて欲しいような……」
いくら頭ではわかっていても、手があんなにも冷たいとちょっとびびる。曖昧に言葉を濁すと、叶多はふっと笑った。