例えば星をつかめるとして


「死んでる、か。僕は、生きてるって言うのかな」

「え?」

つい聞き返して、それから、いつかした会話を思い出す。

──『僕と人間の違いは、なんだと思うのか訊きたくて』

──『種としてはヒト科ヒト亜科ヒト族ヒト亜族ヒト属のホモ・サピエンスと言って、地球上で進化した生物。だから星野は違う。……私には、これくらいしか言えない、かな』

──『じゃあさ、"生きている"というのは? どういうものなのかな。僕のいたところにはなかった概念だから、教えて欲しくて』

──『例えば、代謝を行っていて、子孫を残したり増殖したりする能力があって、恒常性を維持できる……とか、そんな感じだったかな』

あの時は、『人間』についても『生きる』ことについても、満足のいく答えが見つけられなかった。どうしても定義的になってしまって、そんな自分に辟易した。

今でも、そんな哲学的なことはわからない。私は『人間』だし『生きて』いるけれど、強く意識しないまま過ごしてしまっている。生きる事は古く、錆び付いていくことだと思っている私だって確かに、いる。

でも、それでも、今なら言いきれることは。

「叶多は、生きているよ」

手を、私から強く握る。叶多の目をまっすぐに見据えてそう言うと、驚いたように彼がこちらを振り向いた。

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