例えば星をつかめるとして
「……さっき、何の用だったの?」

ところが、初めに口を開いたのは私ではなかった。

ぱっと星野を見ると、まっすぐな視線が私に突き刺さる。

「さっき、用があったんじゃないの? ごめんね、考えてみたんだけど思いつかなくて……」

……どうやら、授業中に目が合ったことを言っているらしい。申し訳ないけれど、別に何か用があったわけじゃなくて何か不審な動きをしないか見張っていただけなんだけど。

なんと説明すべきだろう。思わず、なんだか気にさせてしまっているようで少しだけ申し訳ないなんて、呼び出した目的からは逸れたことを考えてしまった。

「うーん……やっぱりまだ知識が足りないなあ。もう少し"人間"に慣れないと……」

──けれど、続いて独り言のように発された言葉は、そんな思考を容易くかき消す。

"人間"に慣れないと。その言葉は、自分が人間ではないと告げるもので。

「あんた……一体何なの……?」

つい数瞬前までどう切り出そうかと慎重に考えていたことも忘れて、出てきた言葉は、私の疑問がありのまま現れたものだった。

目の前の人間の形をした何かは、そんな私を見るとにこりと微笑む。そこに害意や悪意はおろか、奇妙な色は全く見られなくて、かえって不気味なくらいだと思った。

色素の薄い唇が、ゆっくりと開く。

「そう言えば、まだちゃんと話していなかったよね。……君はもう気付いていると思うけれど、僕はね、」

その一挙一動から、私は目を逸らせない。





「……僕はね、宇宙から来たんだ」



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