例えば星をつかめるとして
宇宙から来た。
彼の言葉が、しんとした屋上に響いた。
「うーん、なんて説明すれば良いのかな……あ、えっと、ほら、君たちが言う、『宇宙人』ってやつ。本当はそれともちょっと違うんだけど」
まるで天気の話でもするように、なんでもないことのように、彼は顔色一つ変えずそう答える。隠すつもりもない、と言うふうに。
嘘をつくな、と、否定できたらどんなに良かっただろう。けれど私は、彼の言葉を聞いて、ついに言われてしまった、くらいにしか思っていなくて。
「遠い惑星だよ。太陽系よりももっと遠い。そこが、僕が生まれたところ」
ふと、彼が私から視線を外して、青く晴れた空を見つめる。その方向が、生まれ故郷だとでも言うように。
「……そう」
「やっぱり。君は驚かなかったね」
楽しそうに、彼は笑う。自分が異なる存在だと私に告げても、全く困らない、ということか。
「僕の本当の姿……と言うのもおかしいけれど、地球に来たときの姿は、君も昨日、見ているはずだよ」
その言葉に、私は昨日の記憶が呼び覚まされた。わざわざ思い出さずとも、簡単に察しはついた。
「あの、銀色のやつ?」
「大正解」
大きく頷かれる。まるでクイズを出しているかのような振る舞いだけど、喜べるところではない。