例えば星をつかめるとして

「ほんとはもっと大きかったんだよ。ただあの追突の衝撃でばらばらになっちゃって、君が見たのは……というか、今ここにいる僕は、その欠片の一つ」

「ばらばらに?」

思わず私は聞き返す。さらりと何でもないことのように言うけれど、ばらばらになっているというのは、もしかしなくても大変なことなのではないだろうか。

「そう。それで、欠片を探す必要があって……って、そうだ!君、昨日は大丈夫だった?」

それまで淡々と説明をしていた彼が、急に語調を変える。迫るように問われて、思わず面食らった。

それが私を案じている言葉だと気付くまでに少し時間を要して、戸惑いはさらに増す。

大丈夫、とは、昨日落ちたことを言っているのだろうか。私はこの宇宙人に助けられて怪我はしてないし、彼もそれは確認しているはずなんだけど。

「私は別に……。昨日だって、崖からは落ちなかった訳だし」

「そっちじゃなくて、指。結構切ってたよね。大丈夫……って、僕が言える筋合いはないんだけど」

「指?」

聞き返して、それからはたと思い出す。昨日、あの銀色を触った時に出来た切り傷。痛みはとっくに引いていたし、左手なので使わないからかあまり意識はしていなかったが、跡はまだ残っていた。

「ああ……大丈夫。血はすぐ止まったし」

「ごめんね、あれ、僕が仕組んだんだ」

左手を見せてみると、彼は痛ましい表情をして、眉尻を下げてそう言う。
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