例えば星をつかめるとして
「欠片を探さなきゃって言ったよね。そのために、この地球の住民の、身体の一部が必要だったんだ」
依然申し訳なさそうにしたまま、彼はそう続ける。
「あの欠片のままだと、僕は移動手段をもてない。だから、地球の住民の身体の一部を得て、その存在になることが必要だったんだ」
「……は?」
「つまり、僕は君の流した血から、こうして人間の身を得たということ。正確には、君の血から遺伝子情報を得て、それを模倣したというか……模倣もちょっと違うな、僕の本体情報と融合させて、適応させるかたちで肉体を造った……と言った方がいいのかな」
……内容が突拍子もなさすぎて理解が追いつかない。
頭の上にハテナを浮かべる私を察したのか、彼自身もうんうん唸りながら説明しようとしている。
「つまり、君が僕の母、みたいなものってことかな」
「んんん?」
そうして捻り出されたまとめは、今度は言葉は理解出来たけれど、やっぱりよくわからない。
「うーん、よくわからないかな……やっぱり人間になって日が浅いから、こういうときどうすればいいのかわからないや……」
私よりも頭を抱えて悩む彼の姿に、少しだけ警戒心が緩んだ。
私の血から、遺伝子情報を読み取って、肉体を造った。私は、母のようなもの。彼の言葉を反芻させて、自分なりに咀嚼して飲み込む。
「……つまり、自分の欠片を探すために、私の血を利用して人間になったということ?」
「そう!そういうこと!」
情報を組み立てながらそうまとめてみると、ぱっと表情を明るくして彼は叫んだ。
「やっぱり松澤さんすごいなぁ。長く人間やってるだけあるね」
「……」
いたく感心したように言われる。長く人間やってることに感心されても、逆に困ってしまうと言うか。今別に人間歴関係ないと言うか。