例えば星をつかめるとして
「……悔しいけれど、そう思う。授業中の態度とか、ぼろを出すかなと思ってみていたけれど、違和感無かったし」
「え! じゃあもしかして、そのために僕のこと見てたの?」
星野は驚いた顔をして、それから、何故か嬉しそうな表情をする。
「嬉しいな、気にかけてくれてたんだね?」
「……えっと」
ポジティブだなこの宇宙人。
胸の中の言葉は、けれど口にはしない。
それだけ疑ってた、ということなんだけど、敢えて言わないことにする。
「……それより、その"星野叶多"って胡散臭い名前はどこから付けたの?」
適当な質問をして話題を変えると、あっさり星野は食いついた。
「ああ、それはね、『名は体を表す』っていう言葉があるから、出来るだけ僕という存在を表せるように考えたんだ。他に"北代宇宙"とかも考えてたんだけど、そっちのが良かったかな」
北代宇宙……きたよ宇宙……宇宙から来たよ、ということだろうか。それよりは星野叶多のがまだ、というかだいぶましな気がする。
「えっ、変かな? 変えた方がいい?」
不安げに、星野が尋ねてくる。なんとも言えなくて、私は首を横に振った。
「……壮大な名前ではあるけど、まあ、素敵なんじゃないの」
微妙に視線が泳いでしまったのは仕方ない。真理はロマンチックで素敵だとか言ってたし、多分嘘ではない。多分。
……話す度、この宇宙人に対する当初の警戒心が緩んでいく気がする。
けれど、次の質問だけはしなくてはいけない。私はそのために、星野をこうして呼び出したのだから。
「それじゃあ、あと一つだけ……あんたが、この地球に来た理由は?」