イケメン伯爵の契約結婚事情
「なるほど。あり得る話です」
「とすれば、エミーリアがあの時気づかなかったのは幸運だった。下手をしたら、彼女の肌に消えない痕を残してしまうところだった」
ひとりごとのようにぶつぶつと言うと、ディルクがくすりと笑う声がした。気恥ずかしい気分で、フリードはディルクをにらむ。
「なんだよ」
「心配だからじっとしていてほしいと素直におっしゃればよろしいのに」
「別に、……そういうんじゃない」
「エミーリア様がいらしてから、フリード様は生き生きとしておられる。気に入られているんでしょう?」
「馬鹿を言うな」
うっかり目をそらしてしまい、それが逆に気持ちを肯定してしまっているようで、フリードは気恥ずかしくなる。
ディルクはさもお見通しというように笑った。
「ほら、そういうところが子供だというんです。好意のない相手にはそつなく対応できるくせに、不器用な人ですね」
「うるさいぞ」
真っ赤になった耳を隠しながら、フリードは咳ばらいをする。
これ以上この話題には突っ込まれたくない。半ば無理矢理にモードチェンジする。
「それより、証拠固めだ。まずは本当にあの丘に咲いていたのがデス・カマスなのか。叔父が高額で流通させているのがこのデス・カマスかどうかを突き止めたい。現地に行くのが一番いいだろう。ディルク、何か理由をつけて外出できるように取り計らってくれ」
「かしこまりました」
頭をぺこりと下げて、ディルクが執務室から出ていく。