イケメン伯爵の契約結婚事情
「後は屋敷内にデス・カマスがあるかどうかの確認か。こっちはカールに頼むか。厨房内の食材はあいつが一番詳しいからな。……早々にカタつけないと、いつまでエミーリアが大人しくしていられるか……」
考えをまとめるための独り言にまでエミーリアが出てきて、フリードは思わず口をつぐむ。
「……重症だ」
手で頭を押さえて、苦悩した素振りをしてみても、顔は笑ってしまう。最近はいつもこうだ。彼女を思い出すだけで、勝手に顔が緩んで気分が明るくなる。
出来れば、あのお転婆が自由に動けるようにしてやりたい。
毎日、山で見せたような笑顔でみられたら、こちらもどれだけ幸せな心地がするだろう。
「……まあ、短い期間だがな」
フリードは、彼女の忠実な従者であるトマスを思い出す。
最初に出会った山の中で、どこまでも彼女を守ろうとしていた男。
『お前、彼女に惚れているんだろう?』
契約花嫁の話を持ち掛け、エミーリアが受け入れた後、フリードは不満げなトマスにそう耳打ちした。
『だったらお前もついてこい。ちゃんと綺麗なまま帰してやる。そうしたらお前が求婚でもなんでもすればいいよ』
あの時はそう言えた。
まさか自分が、エミーリアにこんな風に心を奪われることになるとは思わなかったから。
しかし自分はすでに勢いで彼女の唇を奪ってしまった。
気を付けて距離を置かないと、抑えが利かなくなってしまう。
「約束は、……約束だ」
手放したくないと思いながらも、変なプライドが素直になるのを邪魔する。
ならば契約の一年間がせめて楽しい思い出になるように、自由に過ごさせてやりたかった。