イケメン伯爵の契約結婚事情

「彼女は叔父上の手駒だったんでしょう? なぜ殺したんです。用済みだと判断した理由は?」

「おいおい、まるで私が殺したような言い草だな」

「違うんですか?」


ストレートに問いかけてくるフリードにアルベルトは苦笑した。
ハチミツの小瓶を手に取り、自分のカップに入れる。そして、蓋を開けたまま、フリードの方へ差し出した。


「……昔話をしようか。信じても信じなくてもいい。作り話だと思ってくれ。……昔、ひとりのメイドが子を産み落とした。それが領主の子だったことから、全ては狂いだした」


フリードはハチミツの小瓶をとり、一差しすくいいれる。


「その子は領主の館に引き取られ、夫人からしかるべき教育を受けさせられた。全ては凡庸な跡継ぎの手助けをするために。恩義を感じろと小さい時から言い聞かされ、母を人質に取られた少年に、自由などなかった」


フリードは手を止めて彼を見つめる。


「それは、叔父上のことですか?」


フリードの質問に答えずに、アルベルトの方は視線を伏せたまま顔の前で両手の指を絡ませ顎を乗せている。


「やがて、彼の兄が結婚する。兄嫁は、かつての自分と同じように虐げられ、子を産み育てることを強要され、自由を奪われた。少年は、彼女に自分を重ねていたんだ」


フリードの顔から血の気が下がる。


「……母上とつながっているのか?」


アルベルトは目を細め、彼を愛おしそうに眺めた。


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