イケメン伯爵の契約結婚事情
「お前は、彼女と幼いころに別れたきりだろう。なぜ、兄上と彼女が別れたのか、兄上に聞いたことはなかったのか?」
「それは……聞かなくても元々、ふたりは不仲だったし」
いや、そうだろうか。
幼い時の記憶はあまり残っていないが、三人で狩りに行った時もあったはずだ。
当時世継ぎにもなっていない父は、気軽に領土内を案内してくれたものだ。
それを気に入らない祖母からの母への攻撃は、子供でも眉をひそめるほどだった。
平和主義の父は、ふたりの間にあまり介入しなかった。
孤独を感じた母が、もう一人、祖母からの風当たりの強い人間と親しくなっていくのは、自然な流れと言えないこともない。
「まさか……」
「……少年と兄嫁は、虐げられた者同士、次第に距離を縮めていった。しかし少年はいつまでも少年のままではない。心を通わせた男女が行きつく先は一つだ。それに気づいた老夫人は、男に縁談を押し付けて屋敷から追い出した。その後すぐ、兄と兄嫁は離婚した。それは彼女の腹に赤子がいたからだ」
「叔父上」
「追い出したということは、彼女と兄の間にはもう夫婦関係は成り立っていなかったということだろう。……潔癖な兄上のやりそうなことだ。兄上が自分の子として育ててくれれば、あの子を私のような目に合わせることなどなかったのに」
フリードは言葉が出なかった。代りに喉の奥から出る空気がかすれた音を出す。