イケメン伯爵の契約結婚事情
朝の光に目が覚めて、寝返りをうとうとして、硬い腕に拘束されていることに気付く。
耳に届くのは無防備な寝息。エミーリアはフリードに背中から抱きしめられていた。
「フリード」
声をかければ寝息が途切れ、ゆっくりと腕が緩む。
体の向きを変えて、ゆっくり開かれていく瞼を見つめた。
(まるで夜明けの空みたい)
フリードの碧眼に、エミーリアの姿が映る。こんなに無防備な顔を見せてくれるのは思えば初めてではないだろうか。
「おは……」
「うん」
挨拶の代わりにキスをされて、朝から体中がカッカと熱くなってくる。
「あの、フリード、あの」
「まだ夜だ」
「朝よ。ほら明るい」
言ったとたんに頭からベッドカバーをかけられる。薄闇の中、フリードは昨晩何度もそうしたようにエミーリアにキスを落としはじめる。
エミーリアは彼の頭をつかんで動きを止めさせた。これ以上触られたら変な気分になってしまう。
「フリードってば。朝だって言ってるでしょ」
「……まだ夜だ」
「どの口がそんなこと言うの」
「この口だ」
再び唇をふさがれて、両手首を彼の手で拘束される。抗う気力が徐々に消えてきた。
エミーリアだって彼と触れ合っているのは嬉しいのだから。
しかしそこで、無情にも咳払いがする。
驚いてふたりで顔を見合わせ、フリードだけが顔を出すと、ディルクが居心地が悪そうに目を閉じたまま、入り口の扉の前に突っ立っている。