イケメン伯爵の契約結婚事情
「もういいのか」
「ええ、たくさんいただきました」
「俺ももういいかな。ディルク、カールを呼んで下げさせろ」
まだ席にはたくさんの食事が残されている。
残しておいて言うのもなんだが、エミーリアにはもったいなく思えた。
「フリード様」
「なんだ?」
「私はいつもこのくらいしか食べません。お食事の量は減らしてください。余ったら勿体ないです。その分をメイドさんたちの食事にあててほしいわ。……それと、食事の席にアルベルト様は同席なさらないのですか?」
「叔父上か。彼はいたりいなかったりだからな。基本食事の時間は別だ。量に関しては伝えておこう。俺も確かに多いとは思っていた」
「お願いします」
「でも、お前に言われるまで減らせばいいという発想には至らなかったな」
「どうして?」
「残せば捨てるのが当たり前だと思っていた。そうだな、最初から減らすというやり方もある」
そういえば、農業の盛んな領土だと言っていた。鉱山の多いベルンシュタイン領では大切にされる食料も、どちらかと言えば過剰供給気味なのかもしれない。
「とても美味しかったから、残すのも捨てるのも作った方に申し訳ないわ」
そういうと、フリードはふっと笑い、エミーリアの口元に手を伸ばす。
「なるほど。カールに伝えておこう。では夜に」
そのまま立ち上がり、行ってしまう。
取り残されたエミーリアに手を差し伸べてくれたのはディルクだ。
「すみませんね。あの方は照れるとすぐ逃げようとする」
「照れて……るんですか? 今の?」
「お部屋までお送りしましょう」
ディルクはエミーリアの問いかけには答えず、彼女をエスコートすべく左手をだした。そこに右手を乗せ、部屋の前まで戻る。