イケメン伯爵の契約結婚事情
そこにフリードが入ってくる。先ほどまでの服とは違い、寝間着らしいラフな服装だ。
「疲れただろう、エミーリア」
「あ、はい。フリード様も」
「別に様などつけなくていい。座らないか」
「……ええ」
寝室には大きなダブルベッドが中央にあり、茶を飲むための小テーブルと椅子が置いてあった。
そちらに座ればいいかと思ったが、先にフリードがベッドに腰かけてしまったため、なんとなくエミーリアも隣に座る。
「……フリードは、ふたりでいるときとお仕事中では口調が違うのね」
「誰でもそうじゃないか?」
「お兄様は普段もかしこまった口調で話す人だったわ」
「ギュンター殿か。噂に違わぬ出来者なんだな。あまり話したことはないが、歳が近いからよく比べられる。そんな普段から品行方正なのか」
「フリードは違うの?」
「そうだな。俺は品行方正とは言い難い。父のことは嫌いだったからな。反抗ばかりしていたから口が悪い。今は、さすがに人前では気を付けているが」
「だった……?」
フリードの暗い瞳が気になって、エミーリアは覗き込む。
すると彼は急にいたずらっぽく笑い、ベッドサイドに飾られた花を見やった。
「それにしても、今日はずいぶん香るな。知ってるか、この花の香りは興奮を促す。誰が飾ったもんだか、新婚だからと気を利かしたのだろう。余計なことを」
「え?」
確かに妙に胸はざわついている。
緊張からくるものかと思っていたが花の香りにそんな効果があったとは。