イケメン伯爵の契約結婚事情
*
それから数日、エミーリアは部屋と書庫を何度も行ったり来たりした。
フリードは忙しそうだし、ディルクはほとんどフリードに付きっ切り。なので、おともにつくのはもっぱらトマスの役目となる。
「エミーリア様が本に興味があったとは初めて知りました」
「失礼ね。別に本は嫌いじゃないわ」
「そうでしたかねぇ」
確かに本にまつわる一番の思い出は、窓から抜け出すときに十冊ほど重ねて足場にしたことだ。
父親が不在で、母親に「今日は部屋で一日裁縫をしなさい」と部屋に閉じ込められ、窓の外に通りすがりのトマスを見つけ、外に引っ張りだすよう命令したときのこと。
全く余計なことばかり覚えている、とエミーリアは軽くにらんだ。
「昔のことは忘れてよ。それに……案外と面白いわ。私の知らないことがたくさん書いてある。もう屋敷内の花の名は全部覚えたのよ?」
エミーリアは興味のある事柄には、ものすごい集中力を発揮する。
狩りや乗馬を覚えたころの瞳と同じ輝きを見つけて、トマスはひとり微笑んだ。
「あなたが男でしたら伯爵やギュンター様にとっても良かったでしょうね。立派な片腕になれそうだ」
「女でもなれるかしら。もしこれから私が勉強して、領地の経営の助けができたら、離婚して戻ったとしても邪魔者にはならないでしょう?」
それから数日、エミーリアは部屋と書庫を何度も行ったり来たりした。
フリードは忙しそうだし、ディルクはほとんどフリードに付きっ切り。なので、おともにつくのはもっぱらトマスの役目となる。
「エミーリア様が本に興味があったとは初めて知りました」
「失礼ね。別に本は嫌いじゃないわ」
「そうでしたかねぇ」
確かに本にまつわる一番の思い出は、窓から抜け出すときに十冊ほど重ねて足場にしたことだ。
父親が不在で、母親に「今日は部屋で一日裁縫をしなさい」と部屋に閉じ込められ、窓の外に通りすがりのトマスを見つけ、外に引っ張りだすよう命令したときのこと。
全く余計なことばかり覚えている、とエミーリアは軽くにらんだ。
「昔のことは忘れてよ。それに……案外と面白いわ。私の知らないことがたくさん書いてある。もう屋敷内の花の名は全部覚えたのよ?」
エミーリアは興味のある事柄には、ものすごい集中力を発揮する。
狩りや乗馬を覚えたころの瞳と同じ輝きを見つけて、トマスはひとり微笑んだ。
「あなたが男でしたら伯爵やギュンター様にとっても良かったでしょうね。立派な片腕になれそうだ」
「女でもなれるかしら。もしこれから私が勉強して、領地の経営の助けができたら、離婚して戻ったとしても邪魔者にはならないでしょう?」