イケメン伯爵の契約結婚事情
エミーリアは半ば本気だったが、トマスは困った顔をした。
「……伯爵は、あなたが女性として幸せになることを願っていますよ?」
「結婚だけが女の幸せ?」
「そうは言いませんけどね」
苦笑したトマスは、それ以上の会話を避けるようにエミーリアと距離を取った。
仕方なく、エミーリアは書架の棚を見て歩く。
キィと扉が軋む音がした。
入ってきたのはアルベルトで、エミーリアとトマスに緊張が走る。
「おや、先客か」
「これはアルベルト様」
先にトマスが頭を下げる。エミーリアもドレスの両脇を掴んで礼をした。
「奥方がこのようなところで従者とふたりきりとは感心しませんな」
「誤解ですわ、アルベルト様。私が退屈しているので、フリード様が本を読むように勧めてくださったの。彼を護衛に連れて歩くように言ったのもフリード様ですわ」
普通に反論したエミーリアに、アルベルトは意外な顔をした。
「……思ったより、普通にお話されるんですね。とても内気な方だと思って話しかけるのを遠慮していましたが、これからは一緒にお茶でもいかがですか」
「ありがとうございます。フリード様も一緒の時にぜひ」
「従者はよくて私はダメだと?」
「そういうわけではありませんわ。ただ、アルベルト様はお忙しく執務をなさっていると聞いております。私の相手などさせるのは申し訳ないわ」
アルベルトの視線は鋭い。迂闊なことを言ってはつけこまれそうだった。