イケメン伯爵の契約結婚事情
「実は今回の領地めぐりでそれも確認してこようと思っている」
「え?」
「お前の保養だと言えば大抵のところは入り込めるからな。利用するようで悪いが」
「いいえ、嬉しいわ」
パッと顔を晴れやかせたエミーリアに、フリードは言葉を無くす。
「私、ここ二年ほどずっと、自分は誰の役にも立たないんだと思っていたの。お父様もお母様も狩りはダメとか、女らしくしろとか、私の行動を制限してばかり。でも、外に出るのが役に立つのならこれ以上嬉しいことってないわ。噂の令嬢らしく大人しくしているくらい我慢するわ」
ふ、とエミーリアの顔に影がかかる。フリードの碧眼に、小さなエミーリアが映りこんでいた。
「……我慢などしなくてもいい」
「え?」
「屋敷を出ればいったんは叔父の目は届かなくなる。少々羽目を外しても俺は怒らない」
「ホント?」
「……まあ、乗馬は山の中だけに限らせてもらうがな」
「ムートにも乗れるのね、嬉しい!」
パッと晴れ渡ったエミーリアの頬に、口づけが落ちた。
途端に体を硬直させた彼女をみて、フリードは苦笑した。
「……奥さんはずいぶん奥手だな」
「だ、だって。いきなりだもの」
「そりゃ衝動的にしてるからな」
「え?」
「可愛いと思えば、口づけをしたくなるのが男ってもんだ」
見る見るうちに、エミーリアの頬が真っ赤になる。
「えっ、あっ、……えっ?」
動きさえぎこちなくなったエミーリアの頭をふわりと撫で、フリードは立ち上がる。