イケメン伯爵の契約結婚事情


 まぶしい朝日が差し込んできて、メラニーのご機嫌うかがいの声がする。


「おはよう。メラニー」

「今日からご旅行に行かれると聞きました。エミーリア様はご朝食を、その間に私が用意をしておきます」


いつものように小さなテーブルに一人分の朝食が並べられている。それを見たエミーリアは衝動的に立ち上がった。


「フリードに聞いたの?」

「いえ、ディルク様に」

「じゃあ彼は部屋かしら」


勢いのまま扉に向かい、怪訝そうに見つめるメラニーに告げる。


「旅行用の服は簡素なものでいいわ。あんまり荷物を増やしたくないの」

「エミーリア様、どこへ」

「フリードのところ」

「そんな恰好で。エミーリア様ってば」


メラニーの静止も振り切り、エミーリアはフリードの個室に向かう。同じ階にある彼の部屋はそう遠いわけでもないが、最初に案内してもらった時に場所を確認したきりで、自分から向かうのは初めてだ。


「入るわよ、フリード」


扉を開け放った時の、寝巻にガウンを羽織っただけの無防備な姿、目が点になったようなフリードの顔に、エミーリアは思わず笑いだしたくなる。


「どうした、エミーリア」

「朝食を一緒に食べたいの。ひとりでなんてつまらない」

「だからってそんな恰好で……」


フリードは慌てて立ち上がり、ガウンを脱いで彼女の肩からかけた。
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