もう一度君に会えたなら
 ふっと彼の視線が下方にそれ、わたしを見た。彼は一瞬目を見張ったような気がした。
 だが、彼は何も見なかったかのように顔を背けて歩いていった。
 わたしはそんな彼の後姿を目で追っていた。

「今の人、知り合い? めちゃくちゃかっこいいね」
「そうでもないんだけど」

 なんだろう。
 記憶の奥を引っ張り出すような、感覚。
 それはあの桜の花を見たときと似ていた気がした。

 けれど、わたしにはその答えがわからなかった。

「じゃあ、一目ぼれ? 唯香って恋愛話に興味なさそうだったけど、ああいう人が好みなの?」
「違う」

 と思う。だが、その思うは言葉にできなかった。

「だったら何?」

 わたしはその感覚を言葉にできなくて、友人の追求から逃れるためにも近くのソフトクリーム屋さんを指さした。

「本当に何でもないよ。あそこで食べようか」

 わたしの提案に、彼女は二つ返事で頷いた。
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