HANABI
「あー、何か一時までに全部回れそうにないね。」
「だねー。」
あはは、と千秋の言葉に笑いながら渡り廊下から見える裏庭の景色に視線を落とす。
――心臓が、ぎゅっと縮まった。
あたしの手から、パックのジュースが滑り落ち、床に弾ける。
「…?楓…?」
遅れて隣に並んだ千秋が
そのまま、あたしの視線の先を追いかけた。
「…粟生、と誰?隣にいる人…。」
ポツリ、と呟いた千秋の声はあたしには聞こえない。
だけど、あたしにはわかっていた。
粟生の隣に並んで不自然じゃない、その女の人が、誰なのか。
―――里佳さんだって、わかっていた。
「か、楓!?ちょっと!!」
気が付けば、体が勝手に動き出して、あたしは走り出していた。