奏 〜Fantasia for piano〜
大きく頷く気合十分の私を見て、梨奈は意外そうな顔をする。
「綾って予防線を張るタイプというか、慎重派だと思ってたけど、結構チャレンジャーなんだね。あ、香月くんに対してだけか」
その感想に答えている暇はなく、コンビニのレジ袋を下げて席から離れる奏に駆け寄った。
「奏、待って!」
足を止め、振り向いてくれたその顔には、他の女子に向けたような不機嫌さは見られない。
それに勇気をもらい、「一緒にお昼を食べない?」と笑顔で誘った。
返事は「食べない」のひと言。
考える間もなく即答されたことに、結構なショックを受ける。
断られることは覚悟の上だったはずなのに……。
「用件はそれだけ?」
「うん……」
今日最初の会話がアッサリと終わってしまう。
奏が背を向けようとしたら、急に宏哉が駆け寄ってきて、なぜか私と奏の間に割って入った。
「香月、お前ってど近眼か?」
「は? 違うけど」
「綾はな、クラス一、いや学年一可愛いんだぞ。
その綾の誘いを拒否ってへこませてんじゃねーよ。何様のつもりだよ」