奏 〜Fantasia for piano〜
私を背中に隠すように立つ宏哉。
その筋肉質の後ろ姿を間近に見ながら、なにを言うのかと呆れていた。
学年一可愛いって……かなり恋色フィルターがかかった評価だ。
宏哉以外は誰もそんなふうに思わないから、やめてほしい。
それに、そんな大声で私が振られたような話し方をされると……。
案の定、私達三人にクラスメイトの視線が集まっていた。
恥ずかしさと焦りで宏哉の腕を掴み、「やめてよ」と止めようとする。
ところが「俺に任せとけ」と、斜め上の頼もしい返事をされて、困るばかりだ。
奏は面倒くさそうに宏哉の顔を見ていたけれど、その視線が少し下にずれると、ムッとした顔をする。
私が掴んでいる宏哉の上腕辺りを見ているような……。
「分かった。君の言う通りにするよ」と奏が言う。
宏哉は俺の勝ちだと言いたげにニヤリと笑おうとしていたが、その横顔は直後に焦りに変わる。
「お、おい、俺の言う通りってことは……」
奏が一歩前に踏み出し、私の手を宏哉の腕から引き剥がした。
その手を繋がれ、奏の方へと引き寄せられる。
慌てる宏哉が「待てよ!」と止めるけれど、奏に淡々と言い負かされる。