奏 〜Fantasia for piano〜
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十一月三日、文化の日。
今日はいよいよ音楽祭の当日だ。
抜けるような秋晴れの空が気持ちいい。
今日の最高気温は十六度予報で、日中は薄手のコートもいらないような陽気になりそうだ。
十時から始まった音楽祭の観客席に今、私と梨奈がいる。
私達の出番は十二時十五分予定で、後三十分ほどある。
それまでは客として、音楽祭を楽しむつもり。
芸術の森野外ステージは、その名の通り、木々に囲まれた自然溢れる場所にある。
周囲には音楽と美術の関連施設が点在し、この辺一帯は市内最大の芸術スポットとなっている。
周囲の木々は紅葉も終わりを迎え、葉を落として寒そうな木もある。
でも針葉樹の割合が高いので、緑に白いステージが映えて美しい。
ステージの大きくせり出した屋根の下は五十席ほどの椅子席で、チケットが割高の指定席となっている。
屋根のない部分は、芝生の自由席。
クラシック音楽の好きな客達は持参のシートに座り、防寒対策に毛布まで用意しているお年寄りもいた。
私と梨奈も芝生の上にシートを広げて座っている。
今、演奏中なのは、梨奈の先輩が所属する市民オーケストラ。
有名なロッシーニの『ウィリアムテル序曲』の軽快なメロディに、梨奈は体を揺らしてリズムを刻み、楽しんでいた。