奏 〜Fantasia for piano〜

◇◇◇

十一月三日、文化の日。
今日はいよいよ音楽祭の当日だ。

抜けるような秋晴れの空が気持ちいい。

今日の最高気温は十六度予報で、日中は薄手のコートもいらないような陽気になりそうだ。


十時から始まった音楽祭の観客席に今、私と梨奈がいる。

私達の出番は十二時十五分予定で、後三十分ほどある。

それまでは客として、音楽祭を楽しむつもり。


芸術の森野外ステージは、その名の通り、木々に囲まれた自然溢れる場所にある。

周囲には音楽と美術の関連施設が点在し、この辺一帯は市内最大の芸術スポットとなっている。


周囲の木々は紅葉も終わりを迎え、葉を落として寒そうな木もある。

でも針葉樹の割合が高いので、緑に白いステージが映えて美しい。

ステージの大きくせり出した屋根の下は五十席ほどの椅子席で、チケットが割高の指定席となっている。

屋根のない部分は、芝生の自由席。

クラシック音楽の好きな客達は持参のシートに座り、防寒対策に毛布まで用意しているお年寄りもいた。


私と梨奈も芝生の上にシートを広げて座っている。

今、演奏中なのは、梨奈の先輩が所属する市民オーケストラ。

有名なロッシーニの『ウィリアムテル序曲』の軽快なメロディに、梨奈は体を揺らしてリズムを刻み、楽しんでいた。


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