奏 〜Fantasia for piano〜

サラダを食べる食べないで、亜美と口喧嘩をしていると、「いい加減にしなさい」と、私だけが叱られた。


「ピアノのレッスンがうまくいかなかったからって、亜美にあたらないの。
亜美はまだ子供で、綾は三年もしたら大人になるんだよ」


去年まで小学生だった子供と喧嘩なんて……お母さんにそう言われて、冷静になった。

確かにそうだ。
同じ目線で喧嘩してどうするんだと。


でもピアノのレッスンが上の空で、先生にやる気がないのかと叱られたことは関係ない。

心はずっしりと重く、湖の底に沈んでいるような気分なのに、八つ当たりする気にもなれないよ……。


「ご馳走様でした」と箸を置いて、半分残したハンバーグの皿を、亜美の前に置いた。


「くれるの? わーい!」


無邪気に喜ぶ亜美と、心配そうに眉を傾けたお母さん。

「具合が悪いの?」との質問に首を横に振って立ち上がり、無言で食器を流し台に片付けた。

そのままダイニングスペースから出て行こうとして思い直し、食卓に振り向いた。

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