奏 〜Fantasia for piano〜
大切な写真を机に置き、引き出しを開けて、ビーズで装飾された手の平サイズの宝箱を取り出した。
蓋を開けると、光沢のあるビロード生地の上に、鍵がひとつ。
私の宝物は写真だけじゃなく、この鍵も。
鈍い金色の真鍮の鍵で、持ち手の部分は王冠のような凝ったデザインをしている。
そこから細長い円柱が伸びて、コの字型の突起がひとつ付いている鍵。
よくある家の鍵とは違って、アンティークでお洒落な洋風の鍵だ。
これは奏のおばあちゃんの家に、離れとして建てられていた、六角形のピアノ部屋の鍵。
五歳の奏が『ふたつあるから、ひとつあげるよ』って……。
よその子の私に鍵を渡したことに、深い意味はないと思う。
そして断らずに『わー綺麗。ありがとう!』ともらった私にも、悪気はなかった。
ただ、奏とお揃いの物をもっているのが、嬉しかっただけで……。
今は、大人に内緒で鍵をもらうという行為が、間違いだと分かっている。
でも今さら返すのもおかしい気がするし、今の奏に、二度とピアノの話をしないでと言われてしまったことでもあるし……。