奏 〜Fantasia for piano〜

私はもう、五歳の少女ではなかった。

十七歳に成長した今の自分がここにいる。

体育館ほどの広さの六角形のスペースの真ん中に立っていて、開けて入ってきた扉は真後ろにあった。

ドアというものは普通、壁にくっついているものなのに、なぜかアーチ型の真っ白な扉は空間に置かれている。


混乱する頭で扉を開けてみたけど、向こうの壁と床が見えるだけで、どこにも繋がっていなかった。

驚きの中、もう一度、辺りを見回してみる。

壁と床は真っ白な大理石でできていて、ギリシャ神殿にあるような太くて白い柱が六本建っていた。

上を見上げても天井は見えず、どこまでも柱が伸びていて、白く柔らかい光が降り注いでいる。


なにもかもが白い不思議な空間に入り込んだ私は、混乱する頭で考える。

これは夢だよね?

でも、やけに意識がクリアというか、夢独特のあやふやな感じはなく、目覚めているときと同じように、五感が働くというか……。


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