奏 〜Fantasia for piano〜

コツンコツンと足音が聞こえて、ハッとする。

横を見ると、真っ白な燕尾服を着た白い肌の青年が、こっちに向かって歩いてくる。

どこの国の人だろうか?

やけに整った顔立ちで、かっこいいというより、人形みたいという感想を持った。

瞳も髪も銀色で、背中までの長い髪はリボンでひとつに束ねられていた。

私の前で足を止めたその人は、事務的な笑みを浮かべて言った。


「ようこそ、いらっしゃいました。体ごとお越しになったお客様は久しぶりでございます。
お部屋をお求めですか?」


抑揚はないけれど、やけに上手な日本語だった。
でも、全くと言っていいほどに意味が分からない。

『体ごとお越しになる』って、なに?

『お部屋をお求め』って、ここは賃貸マンションかなにかなの?


「あの、分からないことだらけなんですけど」


質問に答えられずに正直な気持ちを伝えたら、「おや、迷い込んでしまったということですか」と、笑顔のままに言われた。


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