奏 〜Fantasia for piano〜
国語の成績はいい方なのに、やっぱり分からない。
概念って、人でも物でもなく、頭で考えることだよね?
概念としての存在って、一体どういうことだろう……。
これ以上質問を重ねても、分からない答えしか返ってこないのはよく分かった。
それでコクリと頷いて見せたら、管理人は話を次に移した。
彼の手には白いステッキが持たれていた。
「ご覧下さい」と、ステッキを二度、大理石の床に叩きつけると、周囲の景色が幾らか変わった気がした。
ぐるりと見回して、六角形の真っ白な壁に、アーチ型の穴が六つ開いていることに気づく。
奥に通路が伸びているようだが、さっきまでなかったのにと不思議に思っていた。
でも驚くことはなかった。
ここは私の想像の範囲を超えた異世界であることを、既に学習済みだから。
「ご案内します」と、管理人は洗練された動きで私に背を向ける。
この広いスペースから放射状に伸びる六本の通路のひとつに向かって、長い足で歩き出し、私は置いて行かれないよう、小走りで付いて行った。