奏 〜Fantasia for piano〜

「あ、あの……これは一体……」


どう見ても、お葬式。

参列者にアジア系の顔つきの人がひとりもいないので、場所は日本じゃない気がする。

そうすると、この扉はどこかの国のどこかの教会に繋がっているということなのか……。

入ってきた場違いな私達に誰も視線を向けないのも、不思議な点だった。


さっぱり分からない私が、戸惑いながら管理人の顔を見ると、彼は事務的な笑顔を浮かべたままに教えてくれた。


「ここには彼が切り離した心の一部が、お住まいになられています。

最愛の妻に先立たれ、悲しみをこの部屋にしまっておかねば、生きていけないほどだということです」


"彼"とは、棺にすがって泣いている喪服のおじいさんだというのは、管理人の指先を見て分かった。

でも、まだ分からない。

おじいさんが切り離した心?

奥さんが亡くなって悲しいという感情が、この部屋に住んでいる……って、どういうこと?


説明されても理解できない私だけど、外に出されて扉は目の前で閉められる。

鍵を掛けてから管理人は、今度は少し先の反対側の壁に付いている扉のひとつを開けた。


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