奏 〜Fantasia for piano〜

鍵の保管場所は、机の引き出しの宝箱の中と決めてある。

なぜ制服の胸ポケットに入っているのか、なぜ光っているのかと考えていたら、管理人が「おや、そういうことでしたか」と頷いていた。


なにが『そういうこと』なのか分からないでいると、管理人は私の背後に回り、両肩に白い手を置いた。

「移動します」と言われた直後に足がふわりと床から離れた。

そして、新幹線並みのスピードで、通路を前へ飛んで行く。


すごい……これは楽しいかも!

気分は遊園地のジェットコースター。

流れる景色は閉じた扉ばかりで変化がないけど……と思ったら、誰かが部屋の外へ出ていこうとしている扉を見つけた。

しかし、その扉も人影も、ビュンと音を立てて後ろに飛び去り、一瞬で見えなくなってしまう。


管理人がなにも言わないので気づいていないのかと思い、「あの、今、出ていこうとしている人がいましたけど、いいんですか?」と教えてあげた。

すると、「もちろん構いません」と言われる。


「お客様が扉を出て、本人の元に帰るのは自由です。外からは鍵がないと入れませんが、内側からはいつでも好きなときに出られます」


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