君の幸せな歌を


「僕はここにいないし、きっとバンドはやってなかったと思うよ」

「それは嫌だから、良かった。あのときちゃんと話せて」

「うん。ちゃんと言いたいことは言い合おうって言ったよね。月歌は、ちゃんと今でも言いたいこと言ってくれてる?」


どうかなあ、と一瞬だけ考えた。隠しておこうと思っても、冬和って気づいてくれてうまく聞き出すよね。

言いたいことが言えなかったことなんて、記憶にひとつも残ってない。


「冬和が聞いてくれるから言ってるよ。冬和は?」

「僕は言いたいことしか言ってない」


何でだか自慢げな冬和。可笑しい。


「それは何より」

「うん。この焼豚おいしい」

「ほんと? 良かった。冬和、チキンより好きだから。初めて作ったんだけど」


口元がゆるむ。嬉しくて幸せで、胸の中があったかい気持ちになる。どうしよう。

せっかく作ったのに全然食べれてない。


「おいしいよ。月歌、料理うまくなったよね」

「ありがとう」


ネットで得た知識だけど、ちゃんと身になっているようで良かった。

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