恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
気づけば、もう一週間もこの事業部にいる。
借りているホテルの部屋からはまだ退出願いが出されていない。
新しい部屋を探さないといけないな。
ごろりと寝そべりながら、この下の階には『カントク』があって、大上部長やあおいさんたちが仕事をこなしているんだと思った瞬間、急にさみしくなった。
もちろん白いIDカードなので、非常階段から『カントク』のある階への入退出はできない。
会社へいくときはホテル側のエレベーターから下に降りて、会社の入り口から出入りする。
そういえば、最近、横尾さんをみかけないな、と、守衛室の小窓をのぞく。
もしかして『カントク』の新しい任務についているのかな、と想像しながら事業部へと向かった。
「このパンフレット、いつもの部数で発注かけますね」
と先輩がやろうとしていた仕事を先に進め、後輩が問い合わせのFAXが来たと言えばすぐに、
「問い合わせのFAXだよね。あ、これ、やっておくから、コピーお願い」
と、いつもいうフレーズを口にし、フォローする。
ありがとう。助かるよ。椎名さんがいてくれて仕事がはかどるよ。
そんな声がたくさん聞こえてくる。
この声を頼りに自分の力を鵜呑みにしてできる自分なんだと勝手に解釈して仕事をしてきた。
結局、自分は勝手に動いて迷惑をかけ、『カントク』にとっての操り人形でしかなかった。
みなわたしを腫れ物扱いで慕ってくれているけれど、これで果たしていいんだろうか。
借りているホテルの部屋からはまだ退出願いが出されていない。
新しい部屋を探さないといけないな。
ごろりと寝そべりながら、この下の階には『カントク』があって、大上部長やあおいさんたちが仕事をこなしているんだと思った瞬間、急にさみしくなった。
もちろん白いIDカードなので、非常階段から『カントク』のある階への入退出はできない。
会社へいくときはホテル側のエレベーターから下に降りて、会社の入り口から出入りする。
そういえば、最近、横尾さんをみかけないな、と、守衛室の小窓をのぞく。
もしかして『カントク』の新しい任務についているのかな、と想像しながら事業部へと向かった。
「このパンフレット、いつもの部数で発注かけますね」
と先輩がやろうとしていた仕事を先に進め、後輩が問い合わせのFAXが来たと言えばすぐに、
「問い合わせのFAXだよね。あ、これ、やっておくから、コピーお願い」
と、いつもいうフレーズを口にし、フォローする。
ありがとう。助かるよ。椎名さんがいてくれて仕事がはかどるよ。
そんな声がたくさん聞こえてくる。
この声を頼りに自分の力を鵜呑みにしてできる自分なんだと勝手に解釈して仕事をしてきた。
結局、自分は勝手に動いて迷惑をかけ、『カントク』にとっての操り人形でしかなかった。
みなわたしを腫れ物扱いで慕ってくれているけれど、これで果たしていいんだろうか。